この度、The Metropolitan Museum of Art New York に、備前寸胴水指、備前緋襷阿古蛇水指、伊部桶水指の三点が収蔵されました。これは、私が永年求め続けてきた陶芸の造形と焼成が理解され、ご支持をいただいたものと感じています。

今回のメトロポリタン美術館の収蔵の過程を少しお話してみますと、7年前になりますが、ニューヨークで個展をやりました。その時にメトロポリタン美術館をはじめとした美術館関係者やアート関係の方々が多く来場されました。そのうちの何人かの方々とはアートについての話が盛り上がり、また私の造形論などについて興味深く聞いて帰られました。

その翌年、アメリカの著名なアート誌にニューヨークで一年間に行われた展覧会のうちから12名をとりあげ、そしてその作品写真と作品の紹介が掲載されました。

その後、5年後になりますが美術工芸研究所の柴辻政彦先生のところへ、メトロポリタン美術館のスペシャルコーディネーターの方からお手紙が来まして、「安倍安人に収蔵に応じる気があれば収蔵しましょう。そのことを本人に打診してくれ。」という内容の手紙でした。

ところが、柴辻先生もわたしも内容がよくわからなかったため柴辻先生の机の中にそれから1年しまわれていまして、一年後にわたしのところにいただきまして、わたしのところの机の中に1年、計2年間、そのまま眠っていました。

昨年の11月に、ニューヨークにいる川島猛というアーティストが日本に帰って来て、わたしのところに寄りましたので一晩酒を飲みました。

わたしもメトロポリタンの話は気になっていましたが、メトロポリタンというのはあまりに大きい話ですから言ったら笑われるんじゃないかとの思いがあり、そして朝方までお酒を飲んで語らいましたが、その話はしませんでした。

しかしやはり気になりましたので、こういう話があると言いました。すると川島はこういう馬鹿げた話はニューヨークで聞いたことがない。とにかく早くしろと言いました。

ちょうど納得がいく作品三点が揃ったところでしたので、12月に作品を送り、1月に私が行って話しが決まりました。

そういうことで、慌ただしくメトロポリタン美術館に収蔵されましたために皆様にご覧いただく機会がなかったことは心残りでもありますが、いつの日かご覧いただく機会があればと念じています。
安倍 安人


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