茶房ものはらへようこそいらっしゃいました。ごゆっくり閲覧ください。
No.945したり尾2006-05-07 20:54:28.212194+09
さむしろさんの言わんとするところは理解できます。ただ、趣味嗜好がどうしても大きなもの方に向いてしまうもので、今のところ茶入までは届いていないのです。

ところで制作過程です。マスターの写されたとおりで特に加える必要もないのですが、敢えて書けば、対象がぐい呑みほどの大きさです。陶芸をなさる方は皆手が大きいので、この細かい作業はかなり大変だと思いますよ。
No.946マスター2006-05-08 19:53:05.915447+09
大変だと思います。また、数年前に「目がうすくなって造りにくくなった」とも話しておられました。

茶入その3
生乾きの状態で再びロクロに固定します。切り口を濡らしてドーナツ状の土をのせてくっつけます。外側にペンテングナイフをあてて押さえるようにしながら肩を一文字に張らせます。肩先にはみ出した土を削り、肩口の余分な土も切り落としておきます。
No.947したり尾2006-05-09 09:15:48.578873+09
これは、口と肩を作る作業ですね。特に肩は姿を決める作る決定的な作業ですから、全体像をしっかりイメージしておかないと迷いがそのまま作品に表れてしまいます。

この作業過程の話は、このHPの茶入の写真を観ながらマスターの記述を読むとさらによく理解できることでしょう。
No.948マスター2006-05-09 18:18:50.951671+09
そうですね、写真をみていただくのがいいですね。

茶入その4
右手人差し指を内側にあて、左手人差し指を外側にそわせて肩先の土を立ち上げて頚部をつくりアナゴの皮でならす。
口の捻り返しは、茶入の見どころの一つである。繊細でなお勢いのある捻り返しがよい。ペンテングナイフを内側にあてながら、ロクロの回転を利用してスーッと折り返す。
No.949マスター2006-05-10 18:32:35.652872+09
茶入その5
腰の土をそぎ落としカメ板からはずす。左手にのせ、正面を決め右手親指で胴正面に1ケ所へこみをつけます。そして背面二箇所をへこませます。
No.950したり尾2006-05-11 07:35:26.469737+09
「正面を決め・・・」という言葉が気になりました。遅くとも、口や肩を作っている段階では既に正面は決まっているはずです。
確か「アトリエ訪問」にあったと思いますが、普段から様々な焼き物のデザインは、描き溜めていられるようですから、作りながら正面を決めていくことはありえない。
制作するということは、安倍さんにとっては、頭の中にあるイメージを移し替えている作業だろうと思います。
No.951マスター2006-05-11 20:44:47.325192+09
どうでしょうか?  口の捻り返し(その4)や、肩先にはみ出した土の削り(その3)など、最初から狙って作れない部分があるように思います。その時点での出来上がりを見て、最も正面にふさわしい場所を決めるということもあるように思いました。安倍さんに聞いてみましょう。

その6
これによって3つの凹と凸ができます(三角形となる)。この状態で乾かします。
No.952したり尾2006-05-12 13:29:31.020253+09
是非、安倍さんに聞いてみてください。
今回の部分については、特に申し上げることはありません。
No.953マスター2006-05-12 18:39:25.792295+09
茶入その7
2日目。手にかかえながら、木のヘラでロクロ目を消します。ロクロ目があるとヘラ目を入れたときにうるさくなるし、また消すことによってヘラ目を生かすことにもなる。ただし、肩の上から頸部にかけてのロクロ目は見せ所として残しておきます。肩の継ぎ目も消します。
No.954したり尾2006-05-13 08:49:46.23826+09
作り込んでいるのですね。最後の山場でしょう。
No.955マスター2006-05-13 15:40:18.191017+09
茶入その8
正面の凹面に縦に1本ヘラ目をいれて正面であることを強調します。裏面にも1本縦線を入れます。このままでは縦線だけになるので正面に横線を1本引きます。ただし、これは縦線を生かすための従的なものですから、目立たない程度に入れます。
No.956したり尾2006-05-13 22:34:19.513687+09
なるほどね。よく分かります。
No.957マスター2006-05-14 19:01:22.721568+09
茶入その9
正面脇の腰の立ち上がりを1ケ所そぎ落とします。ついで、その対角線にあたる肩先を削ぐ、というように「力の移動」を考えながら、なおかつ自然に見えるようにヘラ目を入れていきます。

NO951の「正面はいつ決めるか」ですが、安倍さんに聞いたところ「ロクロで挽いているので最初に押したところが正面です。」とのことでした。そしてそこから展開していくそうです。これは徳利も水指も全てそうだということでした。
No.958したり尾2006-05-14 19:45:27.846899+09
なるほど。よく分かりました。特に、水指でも茶碗でも茶入れでも、作る原理は変わらないという点が説得力があります。
No.959マスター2006-05-15 20:05:47.125737+09
茶入その10
ヘラ目を入れ終わったら、ぬたを塗って仕上げます。ぬたは、口の内側から頸部、肩の上はロクロを回しながら刷毛できれいに塗ります。胴体部分は、手に持って、太い筆や刷毛で荒く塗ります。
このあと乾燥、焼成となります。

茶入終り
No.960したり尾2006-05-16 16:49:27.391475+09
最後の最後もきっと大事なのでしょうね。
No.961マスター2006-05-16 18:54:20.565711+09
胴体部分はぬたを荒く塗るという話がありましたが、これによって、ぬめっとした部分あるいはざらっとした部分と焼肌に変化が現れ、小品ながら味わい深い焼き上がりとなるようです。このHPに載っている茶入をみてもわかります。
No.962したり尾2006-05-17 14:42:53.538595+09
酒器と茶入れの二つの作り方をご紹介いただいたわけですが、いずれも轆轤を挽いてからの作業が大切なこと、また、作る原理は同じであることがよく分かりました。
No.963さむしろ2006-05-17 17:54:09.160455+09
制作過程について、これまでは本を読んでもなんとなく読み流していましたが、2回、3回と読み返していると、これまでは見えなかったものが見えてきたように思います。
No.964マスター2006-05-17 18:36:32.601293+09
質問がありました。

無知で申し訳ありませんが「ぬた」について教えていただけませんでしょうか。

安倍先生に聞いたところ泥水(どろっとしてねばりのあるもの)だそうです。
作品によって共土であったり違う土を使う場合があるそうです。

高温で焼成したときに溶けて上薬をかけたような光沢のある焼き肌ができるのがこれではないかと思います。(この部分は聞き漏らしたので私見です。)
No.965したり尾2006-05-18 08:10:09.483142+09
私の拙い知識ですが、マスターが書かれたとおり「ぬた」というのは、ヘドロ状に溶かした土のことです。一般的に田や沼地の土の状態を「ぬた」とか「のた」とか「にた」とかいいます。
これを塗らないと肌が荒れてしまいます。
仕上げにも用いますが、制作過程で接着剤としても使います。

なお、表面の光沢は「ぬた」を塗ったためというより「焼き」と関係があると私は理解しています。後にかかる「ゴマ」もまたガラス状になりますからね。
一口にガラス状といっても、つやのあるガラスのような状態になることもあれば、すりガラスのような状態になることもあります。いずれにしても、多分、あれは本当に焼き締めた結果でしょう。高温のため土に含まれているガラス質が溶け出して、表面に浮き出てきたのではないかと考えています。
そのあたりは、安倍さんにお聞きになってはどうですか。
No.966マスター2006-05-18 18:26:49.731204+09
解説ありがとうございました。
この部分(ぬたと焼きの関係)はよくわからないので今度聞いてみます。
No.967したり尾2006-05-19 15:58:40.561831+09
20年近く前、焼く技術について発表され、今回は(といっても数年前になりますが)作る技術を公開されました。つまり技術については殆ど公にされたわけです。
このことによって備前の何人かの作家は影響を受け、徐々に備前焼も変化してきています。備前焼の進歩のためには大変いいことだと思います。
しかし、焼き物全体の状況は悲惨です。あまりにも長く停滞期が続きました。どうも問題は別のところにありそうです。
何が問題なのか、安倍さんに話を聞く機会があったら、このことも聞いてみてはいかがでしょうか。
No.968マスター2006-05-19 18:41:05.440464+09
明日、牛窓のアトリエへ行きますので、この話もしてみましょう。
No.969マスター2006-05-21 15:31:20.267929+09
昨日、牛窓のアトリエへ行ってきました。アメリカ帰りの疲れもとれ大変元気でした。
訪米中にメトロポリタンにも寄られたそうで、展示中の自作備前水指の前で写された写真(データ)を貰って帰りました。近日中に「ものはら別室」に載せます。同時に解説文の写真もありましたのでこれも載せます。

解説文には『安倍からの「gift」』と説明がありました。他にも日本の作家の作品が展示されていたようですが、『○○からの「lent」である』との説明があったとのことです。

「gift」はメトロポリタンの所蔵品となったことを意味します。
これに対し「lent」は預かって展示していることを意味しているようです。

近年、十数人(?)の作家の作品がメトロポリタンに入ったようですが、「gift」=収蔵品となったのは安倍さんの他には(定かではありませんが)あと一人のみではないかと思われます。
No.970マスター2006-05-21 15:50:27.643407+09
収蔵の意義について評論をされているS先生は、概略「入ることの意義なんですけど、一端入りますと、永久保存になりますね。永久保存されるだけではありません。この美術品はひとつの社会科学の対象になります。そのために、美術品がいかに、どういう人の手によって、どんな技術で、どういう概念をもって造られたか、将来ずっと永きにわたって研究されるんです。そのために学芸員というのがいまして、その方々が永い間その担当をするわけです。そして、新しい論理を発見する、あるいは新しい解釈が作品から生まれると、その作品をふたたび展示して、皆さんに論文とともに問う。これが、美術品が永久にたどる道です。」
と紹介されたことがあります。

想像すると、受け取るということは膨大な負担を背負うことにほかならない。従って受け取るについては極めて慎重である。よって極めて狭き門である。

収蔵までのやりとりその他の逸話について改めてじっくり聞いてみたいと思いました。
No.971したり尾2006-05-21 17:11:15.887532+09
メトロポリタンに収蔵された意味合いはよく分かりました。大変うれしいことです。
ところで他にはどんな話がありましたか。披露できる範囲で結構ですが。
No.972マスター2006-05-22 18:03:03.854768+09
7/1〜9/30のパラミタ陶芸大賞展への出展作品がすでに出来上がって出番を待っていました。作品内容はパラミタ陶芸大賞展までお待ち下さい。
据えられるべき場所に据えられ、スポットライトを浴び、一段と存在感を増した作品群を見るのが今から楽しみです。

また、来年への企画も進行中ということでした。

ぬたと焼き成りの話ですが、光沢の有無は焼きによるということで、そういえば以前に聞いたことがありました。
No.973マスター2006-05-22 20:14:39.856575+09
メトロポリタン収蔵までの経過です。
2003年11月 作品写真送付
   12月 作品送付(世話人のところ)
2004年1月  作品持込み(メトロ)
   3月  作品審査、預り証受領
   3月末 著作権移行規約書交付
   5月  メトロポリタン作品収蔵証明書
      館長からの礼状
      プラチナメンバー任命状
                 各受領
No.974したり尾2006-05-23 08:08:34.315696+09
当面、パラミタが楽しみですね。また、早くも来年の企画が進行しているとの事。活躍の場が広がり、安倍安人の地平線が切り開かれることが何よりの喜びです。
作品を鑑賞する者は現在と過去に目がいきがちですが、作家にとって大事なことは、現在と未来でしょうから。
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